雪を農業に有効活用!エネルギーの地産地消を
北海道岩見沢農業高等学校の農業土木工学科・自然エネルギー研究班では、豪雪地帯の特性である「雪」を農業に活用する取り組みを平成12年から推進しています。どのような活動をしているのか、同校・農業土木工学科の阿部先生にお話をうかがいました。
やっかい者の雪を有効利用!
―岩見沢農業高等学校では、雪冷熱の研究を進めているとのことですが、いつごろから、どのような形で行っているのですか?
岩見沢は、北海道の中でも雪が多いことで有名です。やっかい者扱いされる雪ですが、岩見沢農業高等学校の農業土木工学科・自然エネルギー研究班では、平成12年から雪エネルギーを農業に有効活用する「雪の環共育プロジェクト」を推進しています。室蘭工業大学の媚山名誉教授や大石助教の指導のもと、さまざまな開発、研究を行っています。
冬に降り積もった大量の雪で山を作り、春になるとその雪山にもみがらを被せ、夏に冷熱源として活用しています。豪雪は岩見沢特有の自然の産物であり、岩見沢の特産品である米の副産物のもみがらを使うことで、エネルギーの地産地消を目指しています。

―具体的にどのような作物で実践しているのですか?
例えば、トマトの栽培において、雪山から得た雪冷熱を使って夏場の高温障害からトマトを守ります。キノコの栽培でも同様に、人工的に適温を保つことでキノコの成長を助けます。また、アスパラやイチゴ、行者ニンニクなどは畑に雪を積むことで、抑制栽培を行い、出荷時期をずらすことが可能です。その他、ワインを低温で熟成させたり、桜の鉢を雪室に入れることで開花時期を調整したりもしています。

北海道の農業が発展するために
―雪冷熱以外にも研究をしていますか?
雪冷熱以外の自然エネルギーも活用しています。例えば、微生物を加えた糠を発酵させ、その熱を野菜のハウス栽培に活用しています。また、地中は真冬でもマイナスの気温にならないので、地下2mほど掘り、その空気をハウスに送り込むことで気温の調整を行います。雪冷熱と地中熱のエネルギーミックスを行うことで、自然環境に優しいエコな農業が可能となります。

―地域の方々との連携もしていると聞きました。
はい、同研究班の活動は地域の企業や行政からも注目され、農家との協働も進んでいます。また、地域の小中学校のみなさんに雪冷熱の可能性を紹介する取り組みも行っています。およそ20年間続いている「雪の環共育プロジェクト」ですが、これからも地域の農業を発展させるために、活動していきたいと考えています。
