旭山動物園の獣医師・池谷優子さんが、動物や動物園、自然について紹介するコーナーです。

今回のテーマは… 動物園での繁殖についてです。

 命を未来につなぐための 動物園の役割

 動物園の役割の1つに、種の保存があります。動物園が飼育している動物は、絶滅のおそれがあるもの、生息数が減っているものが多いです。その命を未来につないでいくために、動物園は日々活動しています。その活動の中で最もみなさんに分かりやすいのは、動物の繁殖でしょう。飼育員にとって動物が繁殖し、育つことはとてもうれしいことです。  

 しかし、ただオスとメスを飼育していれば、繁殖するわけではありません。野生下とはちがい、人工的な環境で安心して繁殖活動ができるように、環境を整えなければなりません。まずはどのタイミングでオスとメスを同居させるか、これは重要です。うまくいかない場合はおたがいにひどく争うこともあるので、個体の性質、発情のサイクルなどをよく考えて同居させます。 

大きくなったアムールトラ達

 

 出産・仔育てのための 環境づくり

 うまく交尾・妊娠となれば、次の関門は出産です。母親が安心できる環境がないと、出産後に仔どもを殺したり、仔育て放棄をしたりしてしまうことがあります。そのため、安心できる産室の準備が重要です。

 例えば、昨年の2月に出産したアムールトラ。野生下での出産は、巣穴の中で行うといわれています。巣穴の代わりに木で作った産室を用意し、しっかり慣れてもらった上で出産を待ちました。またキリンは立って出産するため、1m以上の高さから仔どもは産み落とされます。仔どもがけがをしないように、昨年12月の出産では事前に産室のゆかに厚く乾草をしきつめて準備しました。そのかいもあって、どちらも無事出産し仔育てを行っています。そして、生まれた命はまた次の世代へ引きつがれなければなりません。そのために動物園は日々努力をしています。

乾草を厚くしきつめたキリンの産室
産室で無事に出産したアムールトラ

 

 あさひやまニュース

 昨年の12月28日(月)に生まれたキリンの仔ども(オス)の名前が決まりました。その名は「あさひ」。すでに背の高さは2m50cmをこえていますが、まだまだ成長中。初めての夏をむかえるあさひに会いに来てくださいね! 

 教えて! 飼育員さん

飼育員さんが、みんなからの質問に答えるよ!

 Q.  今年はコロナでお客さんは少ないですか。動物たちへの影響はありますか。

A. 来園者は大変少ないです。動物たちはというと、特に気にせず日々を過ごしています。しかし、あまりに人がいないため、来園者が来ると興味津々に近づいて行く個体もいます。そんなときは、動物たちにとって来園者は、かれらの生活の刺激成分なんだなと実感しています。 

 


旭川市 旭山動物園

旭川市東旭川町倉沼
TEL.0166-36-1104
http://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/

協力・監修/旭川市 旭山動物園